13.断熱と熱容量および夏場の対策グラフ

まず、右の3つのグラフの説明をします。

図-1のグラフは低気密・低断熱・低蓄熱の非常に熱の
逃げやすい建物の熱環境特性を示しています。

図-2は高気密・高断熱・低蓄熱の場合で現在の高気密
・高断熱といわれる熱の逃げにくい建物の特性です。

図-3は高気密・高断熱に蓄熱容量を大きくした場合を
示しています。

3例とも当然外部条件は同じですから、集熱量、つま
り部屋に差し込む日射の量と外気温は当然同じですが、
室温が様々に変化しているのがわかります。

室温の変動を見ますと、低気密・低断熱・低蓄熱のも
のが日の出直前に最も外気温に近く低くなっています。
断熱材が少ないため冷えてしまうわけです。日中に室
温はそこそこ上がるのですが、集熱しなくなると室温
がどんどん下がってしまいます。気密・断熱が悪いた
めに、せっかく部屋に入った日射もすぐ逃げてしまう
ためです。

図-2の高気密・高断熱・低蓄熱の場合は、気密・断熱が良いため集熱した熱により室温がどんどん上
がってしまったことがわかります。断熱は良いのですが、昼間集熱した熱を貯め込んでおけないため
に、朝方の室温は下がってしまいます。

【図-1低気密・低断熱・低蓄熱】よりは断熱が良いだけましですが、【図-2高気密・高断熱・低蓄熱】
の場合は室温が上がり過ぎてしまい、実際はせっかく集熱した熱を窓を開けて捨てなければならなく
なってしまう場合があります。もったいない話です。

【図-3高気密・高断熱に高熱容量】は上の2者に比べて理想的なグラフの形をしています。朝方、室
温も下がっていませんし、室温も高くなりません。集熱した分を蓄熱層に貯めてしまうから室温が上
がらないんです。蓄熱層に貯め込まれた熱が少しずつ室内に放熱されるため、あまり室温が下がらな
いんです。昼間ただでもらった太陽エネルギーを貯め込んだお陰なんです。
図は室温を20℃に保った時に必要なエネルギー量も示しています。灰色の部分の面積がエネルギー量
です。高気密・高断熱・高蓄熱にするとエネルギーの使用量が最も少ないことがわかります。

【図-1低気密・低断熱・低蓄熱】の条件は現在において論外ですが、【図-2高気密・高断熱・低蓄熱】
の条件でも条件不足であることが良くわかります。【図-3高気密・高断熱に高熱容量】において、暖
房機器に投入するエネルギー量をもっと少なくするためには、先ず、集熱量を増やす必要があるわけ
ですけど、同時に取り込んだ熱を効率よく全て貯め込むことができる蓄熱部のことをきちんと考えて
おかねばなりません。このグラフからは以上のことが読みとれるわけです。

21世紀の住まいに熱容量は不可欠だということがこれでおわかりになるでしょう。それにはまず、出
来るだけ性能の良い断熱をすることが先決です。つまり、高断熱、高気密、高熱容量ということです。
これが、これからの家を作るときどうしても必要です。「気密」につきましては後に詳しくお話しま
す。

ところで、日本の住まいはやはり「夏を旨とすべし」が原則であると思います。今までみたいに設備
を後から入れて、何とかしようという発想では、『省エネ』とは程遠い話になってしまいます。やは
り、これからはまた「夏を旨とすべし」が非常に大切なのだと思います。
簡単に言ってしまいますと、夏には広く開けられ、冬は高断熱、高気密になるように完璧に閉じられ
る構造ということです。理想的といわれるかもしれませんが、夢を持たなければ何事も出来ませんか
ら、あえてこの理想的な構造を提案したいと思います。このような構造は、多分まだ標準工法として
どこでもやられていないのでしょうけれど、これから新築されるのであれば、設計士さんに注文を出
して、チャレンジしても良いと思います。実際、古人の知恵には優れたものがあるわけですから、有
能な設計士さんであれば不可能なことではないでしょう。