20.まとめ

「家づくりのための省エネの考え方」ということでお話ししてきましたが、結論は、エネルギーを自
然の恵みである太陽から取り込み、より快適に生きていこうということだと思います。
ただし、21世紀の快適な家にしなければなりません。それには太陽エネルギーを熱の形で効率よく
貯め込んで利用することと、水から水素を取り出し利用する社会に移行する必要があるのだと思いま
す。そうなれば、「省エネ」という言葉が無くなる社会になるのだと思います。「設備」という考え
から「摂理」を利用するという考え方に頭を切り換えることが重要だと思います。

今はまだ、寒い、暑い、だから早く暖めよう、あるいは早く冷やそうと、刹那的な発想から家作りが
なされているように思います。せいぜいが24時間単位での発想しかできないために、早く暖めること、
早く冷やすことが快適なのだと思い込んでいるのではないでしょうか。皆そう信じているようです。
しかし、365日を1サイクルとする四季の気候変化を利用しつつ穏やかに取り込むという発想が必要
なのではないでしょうか。それこそが人間の知恵の見せ所ではないかと思うのです。住まいを快適に
するばかりでなく、経済的負担も小さくなりますし、何より、私たちを生かしてくれている環境と共
に生きることができるのですから。家づくりは個人の問題であると同時に社会の問題でもあります。
少なくとも石油エネルギーを消費するわけですから環境の問題でもあるわけです。自分の家を作るこ
とは、社会を構成する家を作ることであり、風土の中、環境の中で家を作ることです。一人一人の新
築が好むと好まざるとに関わらず、結果的に、町並みを新しく構成し直すことになってしまいます。
散歩して楽しい町並みが作れるかは、一軒一軒の新築の理念にかかっています。金を出すのは自分で
すけど、実は自分だけの新築ではなく、自分が今からすることが社会に対してかなり大変なことをす
るのだという意識をもう少し持った方が良いのではないでしょうか。

現在、新築するに当たり、
省エネという観点から考えた方が良いポイントをもう一度まとめてみますと、

  ○できるだけ太陽熱を集熱できる構造を目指す。
  ○その為に、大きな熱容量を建物に持たせる。
  ○十分な断熱、気密防湿、換気をする。
  ○太陽電池の屋根にして自分の使う電気ぐらいは自分で作る。
  ○夏のために、遮熱のための仕組みを作る。
  ○通風を基本とする構造にする。
  ○開口部の断熱化、気密化を可能にしておく。
  ○放湿する時の気化熱を利用できる材料を使用する。

などです。

ほかにも、雨水の利用、生ゴミのコンポスト処理、合併浄化槽への切り替え、等々やるべきことはた
くさんあります。が、大事なことは、自分が「自立する意志」をもって当たるということなのだと思
います。

太陽エネルギーに依存する社会になると、その地方の風土にあった21世紀的な新しい町並みが作られ
て、どこへ行っても同じような家が建っている今と違って、随分楽しい旅が出来るのではないかと思
います。その中を、自転車で通り抜ける旅は、いたって省エネで楽しい旅になるでしょう。

最後に『太陽電池を取り付けてペイするには長い時間がかかる』という議論について少しお話します。
森林は、炭素を固定して酸素を放出するわけですが、太陽電池を取り付けるということは、電気を作
り出す木を植林するような物だと思います。そう考えると、植林(太陽電池の設置)するという行為
が環境を豊かにするのであれば、とても楽しいことだと思いませんか。自分が消費する電気ぐらいは
自分で作る、という自立の精神が求められている時代なのだと思います。

植林の話に戻りますけど、木を禿げ山に1本植えても、環境に対してさしたる効果は出ません。しか
し、沢山集まって森になれば、多くの有効な機能が発揮される訳です。木を1本植えるのだってエネ
ルギーはかかります。太陽電池を1セット設置するのにもエネルギーがかかるのは当然です。その量
は木を植えるのと違うでしょうけど、同じ人間がやる行為ですから、使用してから二酸化炭素を出さ
ない物であれば、さしあたって「御の字」だと思います。確かに現在は、太陽電池を作るのに石油か
核分裂エネルギーで作られた電気の世話になっていますが、太陽電池の森が沢山出来れば、そこで発
電した電気エネルギーを使えば、それだけで太陽電池の生産は当然可能になるわけです。いずれにし
ましても、人間社会は産業活動をしなければなりません。産業活動を全て、停止出来るのなら話は別
ですが、残念ながら出来ません。つまり、何かを生産しなければ社会は成り立ちません。どうせ産業
活動をするのなら、使用して二酸化炭素を発生させる物より、使用して二酸化炭素を発生させず、電
気エネルギーを生み出してくれる物を生産してくれた方が良いのではないでしょうか。

これからは、エネルギーを皆で集めて助け合っていく、国内だけでなく、夜は昼の地域から太陽エネ
ルギーをまわしてもらう、一人一人の屋根が太陽エネルギーを受け止めて、エネルギーを得て社会全
体を支えていく、地球上のあらゆる屋根面でエネルギー化していく、個人が集まって全体のエネルギ
ーを支えていく、そんな時代が作れる可能性が原理的には見えてきたような気がします。

皆さん、車を買うときにペイするかどうかは考えないでしょう。だいたい好きか嫌いかの好みで決め
るんじゃないでしょうか。ちょっと見方を変えて、太陽電池の意味を理解して好きになっていただけ
ればと思います。