連載企画「太陽熱を活かす三原則」

 

 「蓄熱」-1   

 

「湯たんぽと蓄熱」

集私達が利用している「蓄熱」の最も分かりやすく身近な物は「湯たんぽ」です。
最近は家の断熱が良くなったり、ダウンの寝具を使うやらで
湯たんぽの必要性はかなり減ったように思います。
電気毛布や暖房機器を夜中使うことにも原因が有りそうです。
現在、部屋を暖房しているわけではありませんが、
私も湯たんぽの必要性を全く感じていません。

終戦後から昭和30年代に掛けては、私にとって特に湯たんぽは必需品でした。
湯たんぽがなければ寒くて眠れませんでした。
寝る前に、背中の当たる部分あたりに湯たんぽを置いておき、
それを足で下へ押しやりながら布団へ入る時の気持ちよさはいまだに忘れられません。
その他にも湯たんぽの想い出は色々あります。
先ずは、火傷です。それも低温火傷です。
朝起きるとくるぶしのあたりに水ぶくれが出来ていることがよく有りました。
その時は知りませんでしたが、いわゆる低温火傷です。
じくじくして治りが遅かったような気がします。
私の家にあった湯たんぽは、真鍮製でした。
火鉢の中に置いたニクロム線の電気コンロに直接載せて沸かすのが冬の日課でした。
ゴムのパッキングをはめ込んだ蓋を締め、古くなった毛布やタオルにくるんで使いました。
当時は耐熱性の良いゴムパッキングが無かったんでしょう、
頻繁に取り替えていたような気がします。
一番困ったのは、次の日に蓋が中々開かないことでした。
母の力ではどうにもならず、蓋の真鍮線の取っ手に棒を差し込んで回そうとすると、
その取っ手が蓋から外れてしまい往生したのを憶えています。
お湯が冷めて中の圧力が下がり、蓋が押しつけられた為です。

湯たんぽイメージ

湯たんぽに水を入れるのは、勿論、水が手に入りやすいことですが、
水が温まり難く、冷め難いという蓄熱機能が大きいからです。
もし水ではなくてコンクリートの塊を湯たんぽの代わりに温めたとしたらどうでしょう。
同じ温度にした場合、コンクリートは水に比べて半分の熱しか入らないし、
その上、5倍も重いので、とても湯たんぽの水の代わりには成りません。
つまり、水はコンクリートに比べて2倍も熱を溜め込むことが出来る、
とても高性能は蓄熱材なのです。

普段の生活の中で、水が蓄熱材であることは余り意識されていませんが、
水は蓄熱する性能がとても大きい為に、地球上でとても重要な働きをしています。
海風、山風ということはご存じでしょうが、
これも海水の蓄熱性能と陸地の蓄熱性能の差によって生ずる現象です。
夜が明け太陽が昇り、大地と海を温め始めます。
海水に比べて蓄熱する能力の小さい大地は、
太陽熱によってどんどん温度が上がって行きます。
それに比べ海水は、いくら温められても熱をどんどん吸収してしまうので、
なかなか温度が上がりません。
温度の上がった大地と接している空気もどんどん暖められます。
それに比べ温度が上がらない海に接している空気の温度も上がりません。
ご存じのように、暖かくなった空気は軽くなり上昇します。
そうすると余り温度の上がらない海の重い空気は
上昇した空気に引っ張られて陸の上に流れ込みます。
これが太陽が昇った昼間に吹く海風です。

太陽が沈みかけ、温める熱が少なくなると
蓄熱量の少ない大地は直ぐに冷めてしまい、海の温度より下がってしまいます。
今度は、早く冷えてしまった大地に接した空気も冷えて重くなり、
暖かく軽い海の上の空気の下にもぐり込みます。
これが、太陽からの熱が弱くなると吹き始める陸風です。
これらの自然現象は全て大地と海の蓄熱性能の違いによって起こります。
但し、風が起こる原因は蓄熱性能の違いだけでなく、
地球も自転によってももたらされます。






(次回をお楽しみに)